ノモンハン事件現地慰霊の旅 モンゴル・ノモンハン紀行
2.モンゴルに行本格的な準備
③―1 行くまでの本格的な準備
趣味であるスキーのシーズンが終了した平成12年5月より、トレッキング(歩き)のトレーニングを行いました。主に地図の見方と長距離を歩く事に慣れておく為でした。
現地は明確な目標物が無い大平原です。今のうちから地図に慣れていないとGPSが故障した時どうなるかわかりません。また、通勤ではずいぶん歩いているのですが、長距離の歩きに関しては全く自信がなかったのです。というのも阪神淡路大震災や明石海峡大橋開通記念ブリッジウォークの時に10kmほど歩いた経験がありましたが、通勤とは比較できないほど疲労を感じたからです。10kmあなどるなかれでした。
地図の見方のテクニックは、兵庫県・大屋スキー場の1級検定で知り合ったおおえさんに聞きました。なんと言っても彼は元オリエンテーリング全日本レベルの実力者で地図を見るのは専門家です。お陰で梅雨に入る頃にはトレッキングに自信が持てるようになりました。その後も6、7、8月と暇ができた時はトレッキングシューズを慣らしておく事を兼ねてとにかく良く歩きました。
③―2 乗馬体験
また、現地では移動手段が馬になる可能性がありました。国境守備隊のガソリンさえ乏しい地域です。
いきなり「じゃあこの馬に乗ってくれ」と馬を見せられても困らない様に、この際、乗馬を体験しておく事したのです。クラブは自宅から車で40分ほどの所にある明石乗馬クラブに決めました。
インターネットで調べると驚く事に、この乗馬クラブは毎年モンゴル乗馬ツアーを開催しているのです。・・とにかくモンゴルがらみの偶然が多いのは不思議。
明石乗馬クラブでは乗馬以外にも、草原での過ごし方などの情報が得られるという期待がありました。実際、モンゴル馬の特徴や扱い方についてかなりの情報を仕入れる事ができました。
当初、乗馬体験は4回コースだったのですが、盆休みを利用して10回コースに編入。甲斐あって、英国式乗馬の基本・軽速歩はマスターする事ができました。(一番、実用価値の高い走り方なのでスキーのプルークボーゲン~シュテムターンと言えるかもしれない)
「モンゴルで馬に乗らなければならない」という目的があってのレッスンでしたが、少々乗馬にはまってしまったのも事実です。レッスン終了後は「乗らなければ・・」から「乗らずには帰れない」と思うほどでした。
今年の盆休みは乗馬漬けで終わりました。
③―3 購入備品
まず、備品で最初に購入したのはハードタイプのレッキングシューズでした。現地は砂地と聞いていたので砂が入らないようにハイカットの耐水タイプを選びました。
GPS;これが無ければ目標物のない平原での活動は困難極まりないでしょう。頼れるものを購入しなければなりません。インターネットで調べるとGPSはアメリカ製が一番という話しです。
インターネット通販でGARMIN社のe-Trexという超小型の物を購入しました。ナビゲーション機能から平均移動速度、最高速度、移動距離まで測れる優れものです。
するとどうでしょう、購入直後の2000年5月1日、アメリカから衛星信号の強制劣化解除のニュースが飛び込んできたのです。それまでは意図的に誤差が100mほどになるような信号であったものが、5月1日からは誤差が10mほどになったのです。私の目的では10mであれば誤差の内に入りません。これは一番の朗報かもしれない!・・それにしても偶然が多い。
方位磁石;以前からスキー場からどんな山が見えるかを調べるためにオリエンテーリング用の物を持っていましたが、今回は、より方向算定が正確になる様に照準が付いた物を購入しました。
現地には2つとも持って行き、主にオリエンテーリング用は地図ケースに入れて使用し、照準付きの物は目標物の方向を確認する為に使用する事にしました。
地図の作成;カラーコピーを正確につなぎ合わせてA1ぐらいのサイズの物を作成し、一目でわかるように緯度・経度の線を1分毎に入れました。
その他;水筒、携帯用の食器、雨具、懐中電灯、ヘッドライト、2日分の携帯食料、等…。準備した物は山登りの道具と同じ内容だったと思います。
結局、総重量は着替えを含めて17kg以上になってしまいました。極力減らしていくのですが17kg以下にはなりません。ウランバートルからスンベルまでの小型飛行機の荷物の重量が心配だったので、永井団長に電話で尋ねた所、荷物の重量は20kgまでという事なので一安心。
しかし、17kgの荷物を背負って関西空港まで行くのは大変な気がしました。
長かった準備期間も終わり、後は出発の当日を待つばかりとなりました。
(追記・・)
平成12年の調査以前にもGPSによる位置決定の調査は行われていたが、100m精度と10m精度ではその意味合いは随分と変わるように思う。実際、平成11年までの調査で得られたデータで戦跡を探してみたが、なかなか一発で探し当てる事が出来ないのが実情だった。GPSが存在しなかった頃、慰霊ポイントを探し出す作業は50~60年前の記憶を呼び起こしながらの本当に大変な作業だったと感じた。
(追記・・・)
この時がきっかけで始めた登山だが、2011年現在、スキーを使った雪山登山で往復25km以上を15時間連続で歩けるまでになった。